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2014年08月02日

高橋洋一VS三橋貴明 タクシー業界再規制論争補足

 先日、産経新聞の「金曜討論」で行われた時計泥棒高橋洋一氏VS経済評論家三橋貴明氏の「討論」にちて批評家の小浜逸郎氏のブログに論評が書かれていました(『高橋洋一VS三橋貴明』http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/94ad439f6c7708f9b4d88c10bb6b3bdd)。

 思想や哲学にも造詣が深い小浜氏らしく、経済効率の観点のみならず公益性や公共精神といった観点から、総合的なアプローチで分析しているのが印象的でありました。

 氏は、時計泥棒の

 米国なら初乗りが日本円で250円くらいだ。運転手は特別な職業ではなく、誰にでも務まる仕事なので料金は安いのが当然だろう

 経済合理的に考えれば、特別な資格がなくてもできる仕事の対価として、低賃金はやむを得ないだろう。


という発言に関して、

 ここに高橋氏の、庶民をバカにした傲慢な経済思想がいかんなく発揮されています。タクシー運転手が「誰にでも務まる」「特別な資格がなくてもできる仕事」でしょうか? 高橋さんはタクシーを運転できますか? 何よりもあの仕事は、行く先までお客の命をあずかるため、交通安全に対する極度の熟練感覚を必要としますし、またさまざまなお客の要求に応じるためのデリケートで適切なサービス心を持つことが不可欠です。
 他の多くの仕事もその点においては同じですが、そもそもこういう大切な「実業」に従事する人々の低賃金を「やむを得ない」と断ずるその冷ややかな「経済合理主義」が問題です。


と非常に厳しく批判し、最後は、

高橋氏には、「経済学が分かっていないという点で国会議員の無知をさらけ出す結果となっている」などと経済学者のおごりをさらけ出さずに、黙っていてほしいものです。

という言葉で締めくくっています。




 高橋洋一氏は、いわゆる如何にも経済学者らしいロジックの組み立てを行う人物であり、まあ、まさに学者風情と呼ぶに相応しい典型的な経済学者であるように思います。また、氏のロジックはかつて小林秀雄が金太郎飴のような理論と揶揄した教条主義的な論理構造を有しています。

 具体的に言うと、つまり、理論の初期条件の設定において「市場原理は正しい」という原則を、ほとんど無批判に受け入れた上で、「市場原理は正しいからタクシーの規制緩和はやるべきだ!!いや、やらなくてはならない!!」と主張する、そして、その主張の正しさの根拠としては再び、「それは市場原理は正しいからだ!!」あるいは「それが(市場原理を是とする)経済学の基本だからだ!!」という論拠を持ち出す。

 つまり、小林秀雄はこのようなロジックは、「あらかじめ飴に金太郎の絵を仕込んでおいて、切った時に、「わあ!金太郎が出てきた!!」と驚いてみせるようなものだ、と述べていますが、この譬えを借りるなら、高橋洋一のような時計泥ぼ・・・ではなく、経済学者がやっていることは、市場原理の絵を仕込んでおいて、それを自分で切ったところで、「ほら市場原理の絵が出てきただろう!!」とやっているようなバカバカしさがあるわけです。このようなバカバカしさ、愚かしさから抜け出すためには、まず最初に「本当にこの飴に子女原理の絵を仕込んでおくことは正しいのだろうか?正当性を持ちうるのだろうか?」と考えてみることが必要なのですが、残念ながら、市場原理を用いたロジックをほとんど自身のアイデンティティにまで昇華してしまっている多くの経済学者の多くがここで挫折するわけです。

 いわば、最初のボタンを掛け違えるようなものでしょう。どんなに頑張って、ボタンを最後まで掛けてみても、どこかちぐはぐでおかしくなってしまう。明らかに、他人から見て違和感がある着方になってしまうのですが、そこで、事情を知らない他人が「あなたの服の着方はおかしくないですか?」と言うと、「ふん、奴らは、まともな経済学者流の服の着方も知らない無知蒙昧なバカどもだから、この服の着方にケチをつけるんだ!!全く、少しくらい経済学者流の服の着方の基本でも習って欲しいものだねぇ」とバカにする。性質が悪いと、そういうおかしな服の着方をしてる人間が、○○大学の経済学者流着こなし術の権威だったりするから、多くの人が、「どこかおかしいんじゃないか?」と心の中で思いつつも、「まあでも、この人は○○大学の権威だからきっと正しいことを言っているんだろう」と納得してしまう。

 まあ、なんか、たとえ話ばかりになってしまったので、最後に具体的に高橋洋一のロジックのおかしな点を考えてみましょう。

価格規制を緩和すれば、自然と業者も利用者も納得できる状況に落ち着いていくはずだった。しかし古い官僚主導型の規制に自公民各党が乗って、今回の規制強化策が導入されてしまった。経済学が分かっていないという点で国会議員の無知をさらけ出す結果となっている。(中略)その通りで、結果的に誰も満足できない状況になっている。料金が高くて食べていけると思うから多くの運転手が参入してきて、共倒れになるという悪い循環に陥っている。しかし価格規制を緩和して料金が下がれば、食べていけないと分かるから自然に参入は減ることになる。そうした市場メカニズムを活用すべきだ

 例えば、高橋氏はこのように市場メカニズムの正当性を主張しますが、これは、本当に正しいのでしょうか?私は、このような考えを無条件に受け入れるのは危険であると考えます。たとえば、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツは、貧困問題について次のように説明しています。

 貧困の責任はあくまで貧者自身が負うべきだという神話がある。失業者が職にありつけないのは、本人が怠け者だからだ。職探しの努力が足りない。そういう考え方を支持する人々は、失業給付延長の提案を示されると、モラルハザードを心配する。失業手当を提供すれば、職を探すインセンティブが低下し、それがさらなる失業増につながるというのだ。経済が完全雇用に近い状態で機能しているときにそういう断言が妥当かどうかは、ここでは論じない。しかし、ひとつの職に四人の応募者がいる現在の状況では、問題は職がないことであるのはあきらかなはずだ。(『世界の99%を貧困にする経済』P335)

 ここで、スティグリッツが述べている問題は失業と失業給付の問題ですが、本質は同じです。つまり、完全雇用で、一定の職業選択の自由が確保されている状況においては機能しうる(かもしれない)インセンティブが、別の状況では機能しなくなる可能性があるということです。

 つまり、高橋洋一氏は市場原理によって「価格規制を緩和して料金が下がれば、食べていけないと分かるから自然に参入は減ることになる」と述べていますが、これはあくまでも、タクシー業界に参入せずとも、別の業界で仕事をすれば十分に生活が成り立つというような選択の余地を残している状況では当てはまるかもしれませんが、不況でタクシー業界以外に新規参入してまともに稼げそうな仕事は他にないというような状況においては、タクシーの料金が低かろうが、参入の数は大して減らない可能性が高いのです。

 また、「それじゃあ、規制強化したら参入が認められた業者は生き残れるかもしれないが、参入できなかった業者の人間は死ねということか?!」と言い出す人間がいそうなので、予め述べておきますが、それまで一人でやって月収20万でなんとか生活出来ていた商売に新規の業者が参入し、価格も低下もあり、二人で15万しか収入がなくなってしまうような状況になれば、一人分の収入は7.5万になるので、どちらの生活も破綻します。特に、現在の様に労働者の実質賃金が一貫して低下し続けているような状況においては賃金の低下を防止する目的としての台数規制、価格規制等は正当化されうるでしょう。

 最後に高橋氏は自分のロジックの根拠を補強するつもりで、

福岡では初乗り300円のタクシーがあるそうだが、それで事業が成立するのなら結構なことだ。安さに文句をつける必要はなく、無理に料金を統一しようとすれば、料金以外での競争が始まる。大阪の一部タクシーのように乗客に粗品を渡すなど、かつて問題になった“居酒屋タクシー”のような不健全なサービスが横行しかねない

と述べていますが、これも全くの詭弁と言って良いでしょう。不健全なサービスの横行の懸念は、全く「規制緩和は正しい」という主張の根拠になりえません。何故なら、普通、不健全なサービスの横行を防止するには、むしろ規制を強化し、そのようなサービスを取り締まるのが普通ですから。

 結局、こんな「不健全なサービスの横行を懸念するから規制緩和だ!!」などというある意味ほとんど倒錯したようなロジックを主張してしまうような滑稽さこそ、「市場原理はいつでも正しい!!」という最初のボタンの付け間違えを犯してしまった鍵カッコつきの『経済学者』の『経済学者』たる所以なのではないでしょうか?

 最後に、再びスティグリッツ氏の規制緩和バカ、市場原理バカ共に対するありがたーいお言葉を紹介して終わりにしたいと思います。

 目指すべきは規制緩和などではないのです。議論すべきは、適切な規制とは何か、ということです。
 規制なしで、機能する社会はありません。たとえば、ニューヨークに信号機がなかったら、交通事故を引き起こし、交通麻痺に陥るだけでしょう。現在のような規制がなければ、環境は汚染され、私たちの寿命は昔と同じように短いままだったでしょう。規制がなければ、安心して食事をすることもできません。
「規制を取りはらえ」という考え方は、じつにばかばかしい。問うべきなのは、どんな規制が良い規制なのか、ということのほうなのです。
 先進工業国のなかでアメリカがもっとも格差がひどいのは、規制緩和のせいなのです。規制緩和という政策のせいで、不安定性、非効率性、不平等性がアメリカにもたらされました。そんな政策を真似したいという国があるとは思えません。
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posted by 古谷経衡と倉山満による不当な言論弾圧を許さない市民の会 at 13:33 | 神奈川 ☁ | Comment(5) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こういう問題ってどういう経済環境下でやるかにより変わると思いますが、
タクシー業界というミクロであれば、規制強化した方が良いでしょうね

タクシー運転手の賃金=コストが高いなら会社は需要に見合わない労働力確保はしないはずなので
その段階で労働市場による均衡が起きるはずですし
人権的にまずい水準の賃金レベルになる市場の均衡が起こりえる事を、政府は容認すべきじゃないでしょうし。
結果的に価格上昇やタクシーの減少からユーザーの不利益にも当然なるでしょうが、他人の生活を破壊して得られる安さ便利さは正当な利益ではないですね
あと、価格面以外でのサービス競争が起きるのがまずいというのも分からないですねw
別にビールの飲めるタクシーがあっても、それは企業の自由でしょうとしかw
Posted by リフレ支持者 at 2014年08月03日 04:33
カツトシの野郎は金太郎飴のごとく『労働者の賃金ガー』しか言わないよな

労働者の利益を至上とする左翼思想に目覚めたんですか?

労働者の利益は無論、重要ですが、労働者の自由・企業の自由・消費者の自由も重要です。

つまり、「○○(←ここには特定の階級や人物が入る)の利益が最も重要なんだ!」というのは、自由に反する独裁的思想なんです。

労働者の利益のみ重要というなら、プロレタリア独裁になってしまいます。国王の利益のみ重要というなら、絶対王政になります。



また、賃金が低くて可哀想だ! 人権侵害だ! 生活できない! というなら、最低賃金を上げるべきではないでしょうか?

最低賃金以上を払えない劣悪な企業を淘汰するほうが、「是非を問わず、賢愚を問わずに新規企業者のみを排除する」よりも、公平です。


だいたい、新規起業できなかったり、新規就職ができない人の人権はどうするんですか? 死ねというんですか!

例えば、タクシー会社を開業するのが夢だったのに、国家権力によってこれを禁止されることを例えてみると、「野球選手になりたいと思い、(その能力もあるのに)国家によってその人が野球選手になることを禁止された」というに等しい、これは自殺しても不思議ではない。
ならば、タクシー会社を起業したいと思ったのに弾圧された人も自殺してもおかしくない。国家によるいじめ殺人ですよこれは!
Posted by 東電社員処刑 at 2014年08月03日 13:23
商品やサービスの価格を国家官僚が決めることが良いというなら、ティッシュや蚊取り線香や洗濯機や携帯電話やスマホや電球や住宅の値段を国家が一律に強制すべてということになる。

ざるうどん(一玉)は一律300円とか。

なぜタクシーのみ物価統制する。トラックは自由運賃だぞ。

差別だ。
Posted by 東電社員処刑 at 2014年08月03日 13:28
新規参入できない人は死ねというのか?

に全く答えていないだろ。



完全雇用にならない限りは職業選択の自由を認められずに3K・薄給・賤業に甘んじて差別されて死ねというのか?
Posted by 東電社員処刑 at 2014年08月03日 14:27
ランダムヨーコが自身のファンクラブ作ったようです。会費3000円。

http://randomyokofanclub.com/entry-form/
Posted by スレチですが at 2014年08月03日 18:17
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